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て言うほど行ってない人間の

2020/ (TIFF) 東京国際映画祭③

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『第一炉香』(中国)


奥さまは懐が深いのか、悪だくみをしているのか。


予告編と解説
https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3304WFC10


お金持ちの奥さまと、訪ねてきた、なぜか貧乏人と思われる姪。
近い親戚なのに使用人までが彼女のことを蔑む様子が疑問なのだ
けど、中盤までさまざまな出来事や人間模様が描かれ、途中から
は姪が自分の思うままにずんずん進もうとするさまが興味深い。
しかしそれには奥さまの協力が不可欠で、姪は「他人の金で楽を
している」とか揶揄しながらもお願い、とすり寄っていくとは
どういう思考なんだと常識を疑う。
でも、いい意味というか、少女はふてぶてしく大人になる。
それに応える奥さまも、どういう心情なんだろう。
きれいで、ヒステリックな奥さま。
不思議なまま、社交界の華やかな世界が繰り広げられていくので
目には美しい映画。こういうのって時々見たくなる。


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『ノー・チョイス』(イラン)


正義vs正義。ヒリヒリ、ドキドキが止まらない。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP24


16歳で代理出産をさせられる少女が主人公なのかと思ったら、担当の
弁護士に焦点が移り、私生活も仕事も密着っぽくなる。
かと思えば次は被告となる産科医師のそれになる。3人とも女性。
以前に、なぜ妊娠できなくなるような手術を同意なしで行ったのかが
争点なのだけど、シラを切っていた事情がかなり後から明かされると、
産科医への見かたがガラリと変わりそうになる。
決して悪者ではない、金のない者の治療を自腹でまで行う日々、それ
は弁護士も同じで手弁当だった。
どちらも女性たちの為を思ってのことなのに、まるで敵のように対立
してしまう貧困地域の暗部を嘆かずにはいられない。
展開に手に汗握る、刺激的なイラン映画

ただ、『ティティ』と顔ぶれが同じに見えて既視感が。
医師は物理学者の元妻では。彼女が懇意にしている医師はその物理学
者じゃないん。その他にもいたような。
キャストを見ると、"パルサ・ピルーズファル" という名前が重複。
やっぱり。でもそれって誰・・・やっぱりあの男性かな。


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©2020TIFF

『悪は存在せず』(ドイツ/チェコ/イラン)


第1章のラストが一番衝撃的。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3304WFC12


「悪は存在せず」「あなたならできると彼女は言った」「誕生日」
「私にキスして」の4章から成る、死刑制度に関わる物語。
淡々とした、日本とあまり変わらないような日常が延々と描かれ、
車中で妻がナニナニの支払いを忘れた、お前はいつもいつも~とか、
迎えに行ったこどもがピザを食べたいと言えばジャンクはダメとい
いつつ宿題の褒美だったかに結局フードコートみたいなところで食
べたり、フツーの家族の様子が続く。
何が「悪は存在せず」なんだろう、と思いつつ、ラストに夜勤と
おぼしき夫の職場でしばらくしてから、唐突にダン、と。
この衝撃たるや。
2、3話もいろいろありつつ1話で免疫できた感じで慣れが出るも、
4話はこれまた「なんの話?」と忘れそうな展開に。

1話だけ短編上映されたら、終映後しばらく席を立てなさそう。
人生何が起こるかわからないけど、おそらく私は一生この仕事に就
くことはないだろう。なだけに、映画で貴重な体験だった。


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©2020TIFF

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©2020TIFF

『モラル・オーダー』(ポルトガル)


なかなかおもしろかった。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP22


なんと実話らしい。祖父が設立した新聞社で裕福な中年女性だが、
夫と息子に裏切られるように精神病院へ入れられるハメに。
最初は演劇好きの面倒臭い不思議ちゃんみたいな人かと思ったけ
ど、自分の意思をきちんと持ち、人生を切り開く強い女性。
若い男性をつかまえての逃避行に家族の捜索、ハラハラするけど
若い彼の友人がイイ味出してる。友人がいいモンか悪モンか不明
なのもまたイイ。
当時のリスボンの屋敷とか衣装も魅力的。
病院のシーンでは、第28回TIFF韓国映画『俺の心臓を撃て』を
思い出した。私、これ好きだったなぁ。


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©2020TIFF

『私は決して泣かない』(ポーランド/アイルランド)


「あんたも典型的なポーランド人だ」

https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3308YTT03


映画祭パンフレットに "素行は悪いけど、めげない17歳" とある。
ホント態度悪~い。他人に迷惑かけても謝らない。助けてもらって
もお礼も言わない。ヤなコだが顔がかわいいので見ていられる。
しかし『皮膚を売った男』でも見たように、貧困の悪循環がここに
もある。母と、介護が必要な障害ある兄と暮らし、そこへ出稼ぎの
父が事故死。遺体引き取りや保険金関係の手続きを、母は英語がわ
かる娘に託す。3人で渡航する金はないからだ。
まだコドモなのに、休校して初めての飛行機でアイルランドへ。
持ち前のデカい態度で、行政等いろんな担当者に噛みつく。とろと
ろしていたら滞在費が余計にかかるから。しかしひとりでどれだけ
不安だったろう。スクリーンから時々感じる。

個人的に10代で管理職だった私は年上すぎる部下や学生バイトを束
ねて上からは叱咤され、同年代の学生を苦労知らずだと下に見てた。
でも高校生の時に彼女のように異国で行動できただろうか。無理だ。
それに、父の秘密を知ってからの彼女の思考、ラストの行動、これら
がめっちゃ大人。冷静に、最適だと思う方法を選択していく。
賛否あるだろうけど、あっぱれ。拍手を送りたい。

典型的なポーランド人だ、とはある担当者のセリフ。
家族のために出稼ぎしているのに、家族は金の振込み日にしか父親
を思い出さない、普段から父を思ってやれ、父の金なんだから彼の
ために使ってやれ。
これは印象的だった。また自分の知らない国際事情がここにもある。
出会った大人たちはだいたい協力的だった。それも救い。

母親が理不尽ぽく描かれているけど母親も苦労してるんだし、母親
を見捨てられない彼女も、やっぱり優しい。

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©2020TIFF

『二月』(ブルガリア/フランス)


映画祭ならではの作品。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP12


気を緩めると寝てしまう映画。静かでセリフがあまりないので。
自然いっぱいの画面も多いが兵役での言動は考えさせられる。
老年期では、電話だけどセリフが怒濤のように流れて、一瞬、
違う映画に移ったかな的な錯覚に陥りそう。

少年期に、主人公が草むらだか森だかにいてその後に家で
「じいちゃん、兄ちゃんがいたよ」と言い、この子に兄がい
たのかと思えば、爺ちゃんが、探した上でなのか騙したのか、
「兄ちゃんはいなかったぞ」と返すシーンがある。
ここ、気になるのでもういっかい見直したい。


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『親愛なる同志たちへ』(ロシア)


モノクロだけど、だからか、おそろしさが伝わる。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3304WFC01


実際に起きたという、60年代の労働者のデモ事件。
バッドエンドになるのかハッピーエンドになるのかなかなか最後ま
でわからない展開。
スターリンを崇拝する公務員女性は娘と意見が対立し、デモで血の
惨劇が起きてしまい、そこに出かけた娘の行方がわからず。。。
無事なのか殺されてしまったのか、ヤキモキする。
国はこの事件をもみ消そうと死体を確認せず引き渡さずドサッと
まとめて遠方に埋める。おっそろしい。
主人公の身分というか、非常に優遇されている立場であり、そうで
あるからこその考え方の矛盾とか、興味深い。


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『ラヴ・アフェアズ』(フランス)   ※最後に数行開けてネタバレあり


フランス人だなぁ~。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3304WFC03


恋愛感や体験が、どれもフランス人っぽい♪
全編に流れるクラシックが美しくてよかった。
サティのジムノペディ、グノシエンヌ、グリーグペールギュント
ソルヴェイグの歌・・・
これってペールギュントだったのね~、日本人歌手が「湖の入江に
立てば・・」っていう曲、としか認識してなかった。勉強になった。

数組のカップル、というか数人の登場人物の複数の恋愛模様が回想
されていくのだけど・・。

 

数行開けて、ネタバレ

 

↓ ↓ ↓ ↓

 

メインの2人(妊婦の彼女と、同棲彼氏の友人男性)も御多分に洩れず
関係を持つのだけど、結局それぞれの日常に帰っていく。
ラストシーンの彼女の笑顔がすべてを物語るようで、ずいぶん人生
経験を重ねた私には納得。
そうそう、結婚は、それでいいんだよ。その時に一番惹かれている
人にこだわらなくてもね。
でもフランス人だから、その後の婚外恋愛もお盛んになるだろね♪