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て言うほど行ってない人間の

2020/ (TIFF) 東京国際映画祭②

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『アフター・ラヴ』(イギリス)


期待してなかったのに、すごくよかったしおもしろかった。


予告編と解説
https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP03


夫の死後に愛人発覚、とはよくあるドラマ。けど愛人を訪ねるも
業者と間違われて家に入り込んでから後半に山場があり、そこか
らもまだ展開があって、釘付けになった。
ちょっと書いちゃったけど、何も知らずに見たほうがいいかも。
宗教感や、憎悪を越えた愛人家族への感情の変化が興味深く、
演出が丁寧で繊細で泣けたし、この映画祭で私のナンバーワン。
夫の携帯メッセージの最後の顛末も…思い出しても泣けるゎ。
主人公の子の有無が終盤まで不明なのだが、ほんの数秒シーンで
明かされる。うわぁ…ここも見逃さないでほしい。

でぶんでぶんした、いかにも"母ちゃん"な本妻と、同じような中年
だけどキャリアウーマンでスレンダーな愛人。日本なら渡辺えり
と誰かスレンダーな人でリメイクしてほしい。舞台劇もいいかも。

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『チャンケ:よそ者』(台湾)


お母さん、大変…。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP16


韓国在住の台湾系華人の男子高校生が主人公。
両親が国際結婚で、台湾人の父親は仕事が多忙で厳格、息子に常に
怒っているような状態。
韓国人の母親は何も言えないのかと思ったら、夫婦ふたりの時には
夫にちゃんと意見する女性で、いいお母さんやなぁと思う。
息子を気にかけているけど、でも実態は深刻で、胸が痛くなる。
父親の意向で華人の学校から韓国の高校に転校した彼は成績優秀に
よる妬みや外国人扱いでいじめられている。
アイデンティティに悩み、恋も絡み、ハーフでなくても自分の存在
意義ってなんだろう、と彼と一緒に歩いて考えたくなる。
悲しいことが起こっても終盤のファンタジーが救いで、SNSの顛末
もよかった。泣ける。

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『ティティ』(イラン)


最後の選択に、拍手。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP31


これは恋愛感情なのかそうでないのか、でもどちらでもいい、病院
で患者と清掃員として出会った男女の人生交錯が興味深い。
チョー頭いい物理学者と、天然ふしぎちゃんのロマ(ジプシー)女性
ティティ。受けた教育や持ってる知識や生活が全く違うから、会話
が噛み合わないのが笑える。
しかし男性はティティがいなければ死んでいたかもしれないし、彼
女も婚約者に虐げられたままの一生だったかもしれない。
数式の下書きを返してほしい、という発端からティティの未来を変
えるまでに踏み込んでいく過程がスリリング。
ティティの婚約者の行動が予想通りで「そら、そやろ」なのだが、
最後まで見逃せない展開が手に汗握った。
エンドロールの海辺がおだやかで、いやされる。

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『赦し』(トルコ)


重くて苦しい。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP14


父に気に入られていた弟を誤って撃ち殺した兄。家族の苦悶。
うーん。でも。
間違って弟を撃っちゃった兄ちゃん、て銃を持ち出したのは弟だけ
どふざけてたとしても弟に向けたのは兄だし、この兄ちゃん、言い
つけられた家の仕事をサボったり弟亡き後も自殺の意志か不明だけ
ど故意に火事を起こしたり、あぁ困ったちゃんなんだなと。
そら親にしたら弟のほうがかわいいゎ、と少し納得してしまった。
ラストシーンは救いがあるのかないのか、ゆだねるような感じ。

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『兎たちの暴走』(中国)


母親の生活がナゾ。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP25


冒頭の誘拐事件はなんだったのか、と思ったら、その次から延々と
回想で、最後に誘拐騒動に至るんだ、と終盤でわかる。
父と継母と弟と暮らす主人公は肩身が狭く、実母と同居することに
なるのだが、蓋を開けると借金だらけ。
なのになぜキレイな車を乗り回したり、昼間からワインやオサレな
食事をごちそうしたりするのか、一般人には眉間にシワ。
主人公がかわいそうになるけど、後半の展開のスリルを楽しむのが
いいのかな、な物語。
主人公の級友との関係の描きかたがよかったし、イエローの多用・
劇場の雰囲気等、美しい映像もよかった。

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『皮膚を売った男』
(チュニジア/仏/ベルギー/スウェーデン/独/カタール/サウジアラビア)


モニカ・ベルッチだったのね♪


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP21


有名アーティストの右腕みたいな女性が印象深いと思ったらモニカ
ベルッチ様だったとは。彼女の存在がいいスパイス。
主人公はシリア難民で、自分の背中を使うアートで契約して世界か
ら注目され賛否が巻き起こる。拝金主義で差別なのか。芸術とは。
男が常に怒りっぽく、なぜ契約してるのにおとなしく従わないんだ
とか逆ギレすんねん…それは日本人ならではの考えかな、と。
背景を知ると、生きるか死ぬかの苦境からはそりゃあ他人を信じた
り従順になるなど難しいかも、と反省した。
でもヒロインはなぜこんな男がずっと好きなんだろう、とは疑問。
あと、内戦による地雷で脚を失った母親のシーンは涙するけど、姉
の歯並びがキレイすぎて…俳優だからそうなるよね。

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©2020TIFF

『Malu 夢路』(マレーシア/日本)


きょうだいって、フクザツ。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3301TKP20


気を抜くと寝そうになる映画。アート系?
マレーシアの田舎町だか漁師町だか。母が娘ふたりと心中しよう
とする冒頭から重い。海や空はこんなに青くて美しいのに。
サティのピアノ曲も、悲しみを増長する。(グノシエンヌ)
月日がたち回想も挟みながら、妹が母を介護していて、母子のそ
れぞれの表情がまた切なくて。
母の死後に姉妹は同居するも二人は合わない。妹が姿を消して、
日本で遺体発見の知らせが。
姉は日本で、水原希子永瀬正敏演じる妹の知人を訪ねて、妹を
わかろうとする。笑顔で幸せな時期があったんだ。
展開が「?」なんだけど、姉妹って難しいよね。テレビではよく
仲良し姉妹とか登場するけど、同居別居にかかわらずそんなに
簡単なものじゃない。
私には男きょうだいも女きょうだいもいるので、親との縦ではな
いややこしさは昔から実感している。
内面的、叙情的な物語。

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『老人スパイ』
(チリ/アメリカ/ドイツ/オランダ/スペイン)


最後の報告に、すべてが集約。


https://2020.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3304WFC08


おもしろさは期待以下だった。
機械やスマホに弱い老人が四苦八苦してして笑えるシーン続出かと
思ったら、老人ホームの調査が進むうちに、切なくなってくる。
予告編のURLを貼る時に初めてドキュメンタリーと知って驚いた。
マジっすか。マジな老人ホームだったのか。
自分の親を思うと悲しくなる。でも少しあたたかい。
エンタメを期待すると肩透かし。