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て言うほど行ってない人間の

2022 / (TIFF) 東京国際映画祭④

©2022 TIFF

コンペティション  『マンティコア』(スペイン)

 


予告編
https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP10 


孤独なゲームデザイナーの恋の行方
『マジカルガール』(14)でサンセバスチャン国際映画祭最優秀作品賞
を受賞したスペインの俊英カルロス・ベルムトの最新作。ゲームのデザ
イナーとして働く若い男性とボーイッシュな少女との恋愛の行方を描く。

 

    ラスト、ちょっとびっくり。。。

 

近所の火事に気づいて男児を助けた主人公は、フツーに好青年だろうと
思っていたら、無自覚だったのか、けっこうヤバめな嗜好が現れていき、
観客として見ているほうもだんだん心がゾワゾワっとしてくる。

出会った女の子はベリーショートで、「まるで男の子みたい」とプレス
仲間は言ってたけれど、私はめっちゃかわいいやん♪と好きだった。
でも男の子みたいだから主人公が惹かれる側面もあり、でも女性らしい
外見の人ともベッドインはできるというバイセクシャルぽくもあり…。

助けた少年と再会後のシーンはおそろしく、「えっ、そうするのか」とい
う行動を起こし、ある登場人物が、また違った依存性だったんだなとわか
るラストがなんだか不思議で。
コンペティションでグランプリの『ザ・ビースト』に比べたら、よく聞く
スペイン語らしいスペイン語が流れ、バルセロナや首都も出てきて、私は
けっこう好みの映画。

 

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コンペティション『山女』(日本/アメリカ)


https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP11 


この山でわたしは人間になれた
18世紀後半、東北。冷害による食糧難に苦しむ村で、人々から蔑まされ
ながらも逞しく生きる少女・凛。彼女の心の救いは、盗人の女神様が住
むと言われる早池峰山だった。


    もろ、日本昔ばなし


特に夜や家の中のシーンは、薄暗くて何が起こっているのか不明。
貧しくて米泥棒をしてしまった父親をかばい、自ら村を離れて山に入る
女の子の心情がつらすぎる。
飢饉を救うのに若い女を生け贄、ってすごい時代で、主人公を差し出せ
と言われた父親は、蔑まされている原因になった祖父の火事を帳消しに、
奪われた田畑を戻してくれるのか、と迫って村人が黙るシーン。

父ちゃんはひどい、となじる弟。でも主人公が戻って一緒に暮らしても
孫の代になっても生活が変わらないという現実を突きつける永瀬正敏
気迫が見もののひとつだな。
ラストはファンタジーっぽく、少し救いがある。
実らないけど主人公と恋仲になりそうなタイゾーという少年が、檻の凛
に涙で話しかける。
達観したように「オレは神様にお願いするんだ、村の役に立つんだ…」
と凛はまっすぐ遠くを見ている。うぅっ。
その後、凛を毛嫌いしていたっぽい三浦透子がすぐさま竹の檻をなんか
しようとしてたので、助ける気だったのかと思ったが、逃げられないよ
うに檻を強化していたのかもしれない。
森山未來どこに出てた?と後で知ってびっくり。山男だったのか。


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©2022 TIFF



コンペティション『ファビュラスな人たち』(イタリア)


https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP06 


“自分らしさ”を追い求める人々
トランスジェンダーの女性たちが暮らすヴィラを舞台に、意に反して男
装で埋葬された友人の遺志を叶えようとする住人たちを描く。コミカル
な中にトランスジェンダーとして生きることの難しさが浮かび上がる。


    セリフの応酬劇。


トランスジェンダー数人グループがわちゃわちゃ、楽しそうな集まりに
見える気もするが、まぁ半生を語りだすとツラいこと多いよね。
連日の映画鑑賞で疲労が重なり、これは眠気が襲ってあまりちゃんと
見られなかったのだけど、ひとりの人物が「私は一番若いのよ」みたい
に何度も強調していたのはよく覚えている。
そんなに年齢が重要なのかな~、彼女たちには。なんて思った。


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クローブカーネーション』(トルコ/ベルギー)


https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3502ASF03 


難民の老人と孫が国境をめざす
冬景色の南東アナトリア。年老いた難民の男は孫娘を連れ、亡妻の遺体
の入った棺桶を引きながら帰国をめざす。しかし戦時下の国境を越える
のは難しく、さらなる困難が降りかかる。平和への希求が伝わる静謐な
ロードムービー

 

    『へその緒』とラストシーンが似ている。


祖父と孫娘、棺を運んで国境越えを目指すが、車のうしろにつないでも
らっても、棺は擦れてボロボロになっていき…
ある人物に「なに、この棺は借り物?借り物なのにこんなにボロボロに
したのか!!」と驚くシーンに私もびっくり。オイオイ借り物かぃ。でも
難民は、棺を買うこともできないのだろう。

母の絵に赤いカーネーションを添えるところ、広大な風景が美しい。
セリフが極少。途中の、洞窟かなんかでの野宿っぽいところ、祖父が孫
に、棺の死体をどかして「ここに入れ」「寝ろ」みたいに指図するのが
けっこう長いのだが、単に地面に直接より暖かいから思いやりなのか、
宗教的とか意図があるのか、笑えるシーンなのかわかりにくい。

孫は出会った人々に食べ物を渡されても食べなかったり、いろいろと
死生観など絡んでいるのだと思う。
ラスト、美しいけれどこれからどうなるのか、ちょっと悲しい。


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『アルトマン・メソッド』(イスラエル)


https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3502ASF01 


テロリスト「制圧」に隠された真実
空手道場の経営不振にあえぐ夫と、妊娠中の妻。清掃婦になりすました
アラブ人テロリストを夫が「制圧」したことが評判となり、道場は危機
を脱するが、妻は夫の話の不備に気づき始める。夫婦の姿からイスラエ
ルの国情を捉えた意欲作。

 

    バレバレの嘘、なのに「まぁいいかな」とされるおそろしさ。

 

この作品はコンペ以外では一番期待していた。嘘がどんどん転んでいく
イラン映画にもちょっと似ているんじゃないかと思って。

でもそういうのではなかった。
妻だけが不審感を抱いているのかと思っていたら、どうも妻の親友も、
警察官もウソってわかっているようなところがすごいな、と。

理由はなんでもいい。結局は皆、彼らを排除したいのか。

ラストの夫もコワいしもう明るい将来はないだろうし、なんともイヤ~
なモノがうずまく緊張感だった。
イスラエル人には都合が悪いハナシのようで、公開が困難かとも。