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て言うほど行ってない人間の

2022 / (TIFF) 東京国際映画祭②

©2022 TIFF

 

『蝶の命は一日限り』(イラン) ★アジアの未来 作品賞  

予告編
https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3502ASF02 


戦争の傷跡、老女の執念
かたくなに沈黙を貫き、誰とも話さない老女。彼女の唯一の望みは、
湖に浮かぶ島への立ち入り許可を得ること。そこには彼女を待って
いる人がいる。しかし、13年経っても入島許可が下りず、彼女は
ある手段に訴える…。

 

    明るい話ではないのに、ある意味、楽しくなる。


島へ行けないまま、年だけ取っていく。
階段昇降もふぅふぅ言いながら倒れそうになる彼女の姿が苦しいが、
なんとか島へ渡ろうといろんな手段を試すので、次は何をするんだろ
うとワクワクしてしまった。
ただ、「え、まさかそんな方法で!」そして悲惨な結果が、と思ったら
夢オチだったりと現実と交錯するため最後までドキドキする。
結局、本当に渡る方法もけっこうびっくりするのだが、それよりも
ラストの "種明かし" に、えーっ、なんかずるい、と感じた。
敏感な人は途中で勘づくのかもしれない。
でも、無料配布の映画祭ガイドにはしっかりネタバレが。
それを知って見たほうが良いのか否か、おすすめには悩むところ。

 

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コンペティション 『エゴイスト』(日本)  R15+ 


https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP05 


この愛は身勝手ですか?
愛とは自分を救うためのエゴなのか、それとも…。高山真の自伝的小説が
原作の本作は、編集者である主人公・浩輔とパーソナルトレーナーの龍太
との愛を描いた物語。

 

    私の中の、助演女優賞は決定。


これも、メインふたりのラブシーンはいいとして、名もなきおじさんた
ちとのカラミが次々…には辟易した。
ふたりは、最初にちょっと「イケメンだよねぇ」の言葉くらいですぐに
交わっちゃうのであまり恋愛ものとして共感ができなかったけど。

後半は、相手の母親役の阿川佐和子のセリフのいくつかに泣かされた。
初対面時には「ご結婚は?」「彼女いないの?」という、あーあ出たよ
ステレオタイプ~。と思っていたら。
あのあと、息子にこんな話を…と随分たってから明かされたり、主人公
と一緒の場面にうまいこと入ってくる認知症っぽい女性への返しに込め
られた感情だったり、涙腺が何度も緩んだ。

まぁ、恋人の母にしていることをゲイ仲間との飲みの場で言っちゃうの
はエゴかもね。それは秘めててよ、と思う。
父親役の柄本明、ちょっとしか出ないのにさすがの存在感。

 

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コンペティション 『ライフ』(カザフスタン)


https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP09 


驚異的な映像美で見せる人生賛歌
『ハーモニー・レッスン』(13)で鮮烈なデビューを飾ったカザフスタ
ンの異才エミール・バイガジンの監督第5作。企業経営に失敗し、全てを
失った男の彷徨を驚異的な映像で描き、人生の意味を問う作品。

 

    「戦争は平和より正直だ」「死を恐れる者は生をも恐れる」


わけわからない荒唐無稽超長編。
映像美、と謳っているのでそれをえんえんと楽しむ作品なのかも。
いちおう、妊娠中の妻がいて貧乏だけどPCスキルを生かしてなんとか
入った会社で大事な仕事を任されるも失敗してしまい(本人は自分のせ
いではないと言い張っている)、殺されかけるが補填のため金を集めて
来い的な脅しで放浪生活が始まるという流れなのだが。

宗教的な男に救われてずっと諭されたり、カラフルな場と服で集団の
躍りが始まったり、いきなり彼らはアイマスク姿になって電車の中に
変わってたりとめまぐるしい。これがアート系というのか、と。

もともと死体である人間を走行車にぶつけて当たり屋として金を稼ぐ
ブロックはなるほどな~とおもしろかった。いやなるほどやないで。
その後は「お前はさんざん苦労したのだから快楽を味わえ」と女体が
ずらずら出てきてセックス三昧なのはなんだかなぁ。
なんせ長い。暗い。
でも「戦争は平和より…」など含みあるセリフが印象に残るので、誰か
と語りたい。


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『そして僕は途方に暮れる』(日本)


https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3503GLS02 


逃げて、逃げて、逃げまくる――。
監督 三浦大輔(『娼年』)×主演 藤ヶ谷太輔 平凡なひとりのフリーター
の人生を賭けた逃避劇。その先は、天国か地獄か――。共感と反感の120
分! 《現実逃避型》エンターテインメント誕生!

 

    もうすぐ雨のハイウェ~イ    輝いた季節は♪


年代的に「カップヌードルのCMやん、大澤誉志幸や~ん」と思ったら
ソレやった。エンディングに本人カバーが流れる。現代の彼。
作詞が銀色夏生って名前を見て、個人的になつかしくなった。

取って付けたようないかにもなストーリーで、人間そんなに変わらへん
でハハハ、と思っちゃう。
トヨエツのお父さんは、映画で見ると愛すべき困ったちゃん、でも自分
の身内だったらゼッタイやだ、っていう人。

"共感と反感の120分" はよくわからんが新しいかも。
"感動の叙情詩" とか謳われると見る気が失せる時もあるけど。


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©2022 TIFF

コンペティション『カイマック』(北マケドニア/デンマーク/オランダ/クロアチア)


https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP08 


ヴェネチア金獅子賞監督の最新作
『ビフォア・ザ・レイン』(94)でヴェネチア映画祭金獅子賞を受賞した
マンチェフスキの新作。北マケドニアの首都スコピエの集合住宅を舞台と
する群像コメディ。題名はトルコやバルカン半島で一般的な菓子の名前。

 

    おもしろい悲劇と、おそろしい悲劇…。


男1人+女2人、x2組の家族の物語。
おもしろかった~。1組の、浮気現場に遭遇するところは最高。
妻に見られてまだ股間を揺らすか、って。
で、浮気相手の女性がバイなのか、妻にも迫って彼女もその気に。
けっこうぶっ飛んでて笑っちゃうよあのキャラたち。

もう1組は「妊娠なんて体型くずれるし絶対いやだ」と親戚の少女に代
理させるのもあり、こちらの夫婦間系はちょっとシリアスになるけれど。

北マケドニア映画は『ペトルーニャに祝福を』を見たし、"ヒロシの迷宮
グルメ" でロケ地だったスコピエがこの舞台だったので景観も楽しみにし
ていた。でも展開が楽しくて風景はほとんど覚えていない。