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て言うほど行ってない人間の

2022/ (TIFF) 東京国際映画祭①

コピーライトマーク2022 TIFF

映画祭は楽しい♪

 

第35回東京国際映画祭

開催期間:2022 年 10 月 24 日(月)~11 月 2 日(水)
会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区

公式サイト:www.tiff-jp.net

 

©2022TIFF

東京グランプリ/東京都知事賞:『ザ・ビースト』(スペイン/フランス)
観客賞:『窓辺にて』(日本)

 

今年も東京国際映画祭出品作を鑑賞させていただいた。30本。
会場が日比谷周辺に変わって2年目、コロナ禍のため中止になっていた
レッドカーペットイベントが3年ぶりの開催で、テンションが上がった。
まだまだ海外関係者が少なかったけれど。

 

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『へその緒』(中国)


予告編
https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3502ASF04 

 

内モンゴルの草原で結ぶ親子の糸
ミュージシャンの青年は認知症の進む母を引き取り、母の故郷の大草原で
ふたり暮らしを始める。内モンゴル出身でフランスに学んだ期待の女性監
督チャオ・スーシュエ、注目のデビュー作。

 

    映像と音楽が、美しい。


都会でのDJ生活から兄夫婦の介護のシーン、そして大草原へ。
認知症の母を「閉じ込めるなんてひどい」と兄をなじるけど、きれいごと
では暮らせない。
大まかにはきれいごとが並んでいる映画かもしれないが、結局は母に縄を
付けたり迷惑を被ったりする事件が散見する。
音楽はどこでも作れるから、都会でライブの時だけ預かってくれ。
そう兄に言って草原で母の思い出を探して移動を続け、主人公の小さな恋
もスパイスに。
ときどきに奏でる音楽が楽しくも美しくもあって癒された。
ラストシーンの、幻想が混じる躍り、これで昇華されるんだなぁ。
高齢の自分の親を思って泣きそうになった。いい映画だった。

余談だけど、途中で酔っぱらいのトラックに突っ込まれて家の壁が悲惨に。
今回の映画祭で、このような "家に穴が開く" のが3作品はあった。
プレス仲間と「○○(作品名)も穴開いた」「□□も~」で少し話が弾んだ。


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彼方の閃光』(日本/アメリカ)  R15+ 


予告編
https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3505NCN03 


その瞳に映る世界は、姿を変える
「音」だけの世界から「色彩」へと帰結するストーリーは、観客を「映画
の根源をたどるロードムービー」へと誘い、戦争の記憶をたどり、「戦争
とは?敵とは?」と次世代へ問いかける。

 

    男性ふたりのベッドシーンが濃い~。


なんと言ったらいいか、迷う作品。
まず、主人公が盲目であって手術して10歳からモノクロで見えるように
なり、それが数十年のちにまた世界が変わる。
それから長崎の原爆体験を経験者から聞き出す行為。
そのどちらかを主軸にしたらいいのでは、なぜふたつなんだろう、と。

今回はこれに限らず、男性どうしのベッドシーンがある映画が多数。
時代の流れかもしれないが、性別に限らず延々と見せられるのは辛い。
ずいぶん前に寺島しのぶ氏が、性生活はあたりまえなんだから映画で
演じるのも当然、みたいに言っていたが、当たり前だからって排泄の
シーンを長々と見せるのも違うと思うし不快だし、性交も同じかと。
誰トクなんだろう、と疑問に思う。
高齢者ふたりが手を握って静かに語るシーン、じゅうぶん説得力が
あって、それで関係性がわかるいい場面だと感じた。

映画の第3章、2070年の日本はナウシカの世界のように防毒マスクの
ようなものを装着して外出している。でもグリーンがとても美しい。
こんな環境にならなければいいけど。

 

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©2022「窓辺にて」製作委員会

コンペティション  『窓辺にて』(日本)   ★観客賞

予告編
https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP04 


たとえパーフェクトじゃなくても
稲垣吾郎主演×今泉力哉監督。妻の浮気を知った男が、芽生えたとある感
情に思い悩むが…。正直すぎる男がそれでも幸せを希求する、ちょっぴり
可笑しい大人のラブストーリー。

 

    パチンコってすばらしい、時間とお金を一度に失えるんだから!!


今泉監督作品は、最初に東京国際映画祭で『サッドティー』が衝撃で、
その後の『知らない、ふたり』も夢中になった。
なんておもしろい展開なのだろうと。ラストもいい余韻。
でも『パンとバスと…』でアレ?とがっかり、今作もどうなんだろうと。
ジャニーズ主演だけで話題性はばっちり。
でも関西人の私にとっては「ホントにこんなしゃべりかたすんの、東京
の人って」とか、わざとらしすぎて苦笑いするセリフの羅列。

モデルハウスみたいな家で、会話も生活感がなさげ。
共感もできないし、ファンタジーにも見えない。
パフェを食べるシーンは、なんであんなにちびっとしか食べずにすぐ水
を飲んで、結局少ししか食べず…映画でよく見るパターン。
好きなものという設定なら、おいしそうにたくさん食べたらいいのに。

私はこのストーリーや展開の良さがわからなかったが、唯一、タクシー
運転手が「時は金なりって言うでしょう、パチンコってね、すごいんで
すよ、」と時と金を一度に失うガハハ~みたいなセリフが印象的。
笑った。金言じゃないか♪パチンコ経験はないけれど。


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『突然に』(トルコ)

https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3502ASF10 


五感を刺激する斬新な女性映画
夫と一緒に30年ぶりにイスタンブールに帰還したレイハンは、原因不明
の嗅覚障害に見舞われ、絶望して家を出る。見知らぬ町のホテルで働く
彼女に新たな出会いが訪れる。観るものの嗅覚、触覚、聴覚が研ぎ澄ま
される新感覚映画。

 

    「お互いにこどもだったのよ。親の言うことを聞くしか…」


絶望して家を出る、と解説にあるけどそれにしては新しい仕事に就くし、
その土地でいろんな人と知り合うし、めちゃくちゃ積極的で矛盾してる
んじゃ、と感じる。
でも冒頭の漁港で貝を買うシーンは終盤で回収されて、しみじみと画面
に見入った。
母親から隠れるように帰るところとか何度もあって疑問だったのだが、
幼少期の出来事から親子関係がうまく運べないんだろうなと。

足を引きずって歩く主人公の、理由が判明して切なくなる。
警察にも連絡されて、出会った男性ともちょい気まずくなり、今後がど
うなるんだろうと気になりつつ、幼なじみと再会して胸のつかえが少し
でも取れたのは良かったな。
イスタンブールの風景もいいなぁ。


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『私たちの場所』(インド) 

https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3502ASF08 

トランス女性の物件探しの奮闘
トランスジェンダーの二人組が転居先を探そうとするが、性的マイノリ
ティをめぐる不寛容と差別の壁は厚く、家探しは難航する。個人の監督
名を冠しない注目の創作集団、エクタラ・コレクティブによる集団製作。

 

    胸が痛くなる。

 

「私が一生タダ乗りをしても、償うには足りない」
差別を受けたり暴行されたり。
自分も君たちのような人に暴言を吐いたことがある、だからせめてお金
はいらない、みたいに言うリキシャの運転手。
いいえ払う、一生タダでも男の罪は償えない…と主人公が返した言葉だ。
でもあなたは気づいた、それは大事、みたいな救いのセリフも。

底辺の女性もいろいろな境遇で辛いし、男らしさを求められる男性もし
かり。トランスジェンダーも。
一部の人でも冷遇してしまう世の中は、結局はみんなが生きにくくなる、
首を絞め合う世の中なのになぁと思う。