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て言うほど行ってない人間の

2014/東京国際映画祭 ①

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(過去分を転記)

10/23~31開催。

〔レッドカーペット・オープニングセレモニー〕
嵐の5人がサプライズで登場し、会場は大興奮の渦!! 告知してたら
エライことになってただろうな。

 

各映画の監督・キャストなどが続々と登場。今年はアニメのライン
ナップが多いのと、コミック実写化などもあって、キャラクターが
目立った。ベイマックス進撃の巨人寄生獣ドラえもん、キティ
ちゃん、チョコリエッタの犬まで。昨年は怪獣たちだったが今年は
ウルトラヒーローたちも!!
しかし、染谷将太は若いのに“大物感”がハンパない。
カーペットではTIFFロゴの車で登場する演出もあり、寄生獣キャス
トがそれだったのだが、ドアマンに会釈することもなく、挨拶では
マイクマン(?)にも堂々と。
大先輩の深津絵里に、まるで後輩にするようにマイクを渡す・・
深津絵里のほうが下みたいに頭をさげていた。彼を生で見たのはこ
の映画祭が初だが、実力派と注目されてたからきっと10代からすで
にこうだったのだろう。

 

コンペティション国際審査員記者会見〕

審査委員長 ジェームズ・ガン(脚本家/映画監督)
審査委員 イ・ジェハン(映画監督)
ロバート・ルケティック(映画監督)
エリック・クー(映画監督)
デビー・マクウィリアムズ(キャスティングディレクター)
品川ヒロシ(映画監督/芸人)

ジェームズ「日本が好きで今回この話で来日でき幸せ。小さい頃、
ウルトラマンバカだったので、レッドカーペットで彼らが前を歩い
ていてびっくり。ちゃんと会って握手などしたかったがなにもでき
ずじまい」
品川(通訳後にすかさず)「僕ウルトラマンと一緒に写真撮りま
したよ〜」
ジェームズ “I hate you!” 会場に大きな笑いが。

各々が「見たことのない作品に出会いたい」「普段は自分のチョ
イスだが今回は何があるかわからない。自分の考えや経験くつがえ
す映画があるかも」など。

影響を受けた監督は、の質問には各国の映画監督名が次々と挙がり
「1日中でも話せるからキリがない!」との結論に。日本の監督も多
数挙げられ、品川ヒロシの「18歳のころ、芸人になりたいなーでも
映画監督にもなりたいなーと思っていたら北野武さんが初めてその
道を作ってくれた。だから僕もまず芸人になり、それから映画監督
になろうと思った」には、ほほえましい笑いが起こった。

 

映画について。

★→とってもよかった〜
◎→これもよかった〜
◯→ワタシ的にはイマイチ・・

 

まずコンペティション部門の作品から3つ。

◎『紙の月』(日本) 【観客賞・最優秀女優賞】

 

サンタフェ』よりも衝撃的?

 

{若い男に溺れ、銀行の金を横領し破滅に向かう女性。}

 

ほとんどの人物のスピンオフを見たいと思った作品は初めてか
もしれない。メインキャストだけでなく、主人公の顧客の高齢
者たちでさえも、だ。各キャラが立っていてすばらしかった。

 

1994年。銀行の契約社員梨花は、夫との間に溝を感じ始めて
いた。ある日顧客の孫の光太と関係を持ち、彼の借金のため銀
行の金に手を付け、いつしか巨額の横領へと発展していく。


濡れ場がスゴい。いや、フツーっちゃあフツーかもしれないし、
激しいといえば激しいかも。でも、池松壮亮ってば宮沢りえ
○○○まですんの!!とびっくり。 ←略して3文字だが、伏せ字で
も書けない…。
(『サンタフェ』は宮沢りえが18歳の時に出したヌード写真集。)

 

「受けるより、授けるほうが幸い」
学校や恩師の教えがしみついていた彼女。しかし、おそらく忘れ
られていたその信念が大人になって極端に弾けたのだろう。
タガがはずれて不正がエスカレートするごとに、不穏な旋律と
ともに私のドキドキもどんどん高まっていって、とても緊張した。
終盤の小林聡美の言葉ひとつひとつが「もし現実やったら冷静に
こんなん並べるわけないゎ〜」とは思いつつ、ずっしりと響いた。
ふたりとも、ずっと真面目に生きてきた女性なのだ。

ホテルで豪遊する中で、一度、カップヌードルをすする姿がある。
高そうなワインやルームサービスの食事シーンの次のそれは妙に
リアル。あぁいうときのカップ麺っておいしいよなぁ。(←え?)

映画祭コンペ部門の最優秀女優賞は別の方を予想していたのだが、
緊迫感あふれるテーマと演技は楽しめた。
“公衆電話に張り紙多数”の時代がなつかしい。


《記者会見》

宮沢「いつもは客の立場なので反対側に立っていることが不思議。
感想がこわいが一所懸命作ったので自信を持ってお届けできる」
「今までの役は世間にモデルがいたけれど、今回は見当たらず不
安だった。手探りしたが、でも徐々に梨花という役が輪郭を帯び
てきて、最後はものすごく熱をもった人物になってよかった」

池松「公開前に見てもらうのは緊張。映画祭上映は間口が広がる
ので嬉しい」「多数の女優さんと共演したが、宮沢さんのように、
ここまで役のためにどうなってもいいんだと、身も心も捧げると
いうような方は初めてだった」

吉田監督「前作の『桐島、部活やめるってよ』とはできるだけ違
うことをやりたかった。原作を読んでヒロインの逃げる姿が焼き
つき、自分で映画化して吐き出すしかないと思った」
「誰に共感するか…すべての人物に共感できるともいえるが、そ
れよりも彼女たちをずっと見ていたいという気持ち。彼女たちに
突っ走ってもらいたい」
「ひとつ苦労したのは・・・銀行員に取材しても、こうしたら横
領できますよとは教えてくれない(笑)もしかしたら、という架空
として話してくれたものを組み合わせて作ったので大変だった」


そうか不正方法は教えてくれないのか。そりゃあ難しいだろうなぁ。
観客賞、そして最優秀女優賞、おめでとうございます。

 

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神様なんかくそくらえ



◯『神様なんかくそくらえ』(米/仏)【グランプリ・最優秀監督賞】

 

うーん。私にはダメだった・・・

 

{主演アリエル・ホームズの体験談。ドラッグ依存の若者を描く。}

 

ドキュメンタリーとして見ればいいのかもしれないが、恋人に
「死ぬ死ぬ言いながらいつ死ぬんだよ!だったら今ここで本当に
死んでみろ」と迫られ手首を切ったり、仲間にドラッグを要求
したり、同じ行為が延々と繰り返され、救いもない。これがグ
ランプリかぁと少々落胆。
ドラッグやそれに溺れる人が身近にいないから興味が持てなく
て入り込めないのか、と思っていた。熱演だったが10分くらい
でお腹いっぱいに。
ところがところが・・・ ↓↓↓ (下記作品はすごかった)


★『マイティ・エンジェル』(ポーランド) 【最優秀男優賞】

 

この圧倒的な力強さはなんだ!

 

{成功した作家が、アルコール依存症を振り返る。}

 

ドラッグやアル中を描く映画は私にはイイと思えないんだ、と
の思い込みが覆った。目が離せなかった。

失禁に放尿、脱糞、ゲロ…服も靴も部屋も、公道も汚物まみれ。
我慢などという言葉が人生にないかのように、ダダ漏れの毎日。
こんな自分がいやだ、なのにマトモに戻れない。また同じ日々
を繰り返す。
死にたい、より先に酒に手が伸びる。金を盗んでまでも。

主人公のそれも、リハビリ施設の複数男女の経験談も回想シー
ン付きでどんどん展開される。これでもかこれでもか、と。
汚い、汚い! なのにすごい迫力で惹きつけられる。画の強さが
すごいし音に頼っていない。カメラワークや演技がすばらしい。

 

《記者会見》

出席:ヴォイテク・スマルゾフスキ(監督)、
ヤツェック・ジェハック(プロデューサー)

・映画化の理由
アルコール問題は自作でたびたびサブモチーフとして登場す
るが、この問題にひとつのケリをつけたいと思いメインとし
て取り上げた。同時に原作の中の時間の混沌・アル中の人間
の感覚・その重なりあいに魅力を感じた。

アルコール依存症ポーランドの公共サービスについて
私たちの国は最先端とは言えず、下から10位以下だと思って
いる。かつて中毒者は安いワインを飲み、橋の下で寝泊まり
するイメージだったが、たとえば映画によってアルコール依
存症は老若男女・成人こども問わずすべての人の問題である
と明らかになってきた。
しかしこれは原作者の実体験でなく頭の中の幻想。共産主義
時代の青春に根底がある。ソ連時代と変わったのは飲酒量。
昔は半リットル、今は1/4リットルの小瓶を買う。昔はざっく
りいうと酔って職場に行ってもクビなどにならなかった。
今は違う。

・ハンディや防犯カメラ等、さまざまな機器を多用している点
私はいつも映画の技術をいろいろ混ぜるのを好む。それによ
り、現実と彼の頭の中の区別をつかなくする効果がある。


原作のエピソードに基づきながら、監督もいろいろ観察した
ことを混ぜたり、俳優も自分の経験を活用したりと、でも
「現場は全員シラフだよ」と撮影話を語った。私も目を覚ま
された作品だった。